視える

心霊・怪談・本当にあった話かもしれない。暇つぶしにどうぞ~。

手鞠

これは私が中学生から高校生頃の話です。

 

私の実家は、私が中学生の時に家を建て替えました。

元々あった場所を取り壊し、そこに更に一回り以上大きな建物を建てたのです。

家を建て直している間は、自宅敷地内に簡易のプレハブ住宅を設置し、そこに数か月住んでいました。

 

 

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新築工事中のプレハブ住宅では、それまで住んでいた家のときから飼っていたセキセイインコも一緒でした。

そのインコの名前を「ふくちゃん」とします。

ふくちゃんはよくおしゃべりをする子でした。

「ふくふくふくふくふく ふくちゃん!」とか「ふくちゃん!ふくちゃん!」などと自分の名前を楽しそうに連呼しています。

 

その子に異変が現れたのは、プレハブ住宅に移って間もない頃でした。

お腹のあたりにしこりがあるような気がしていたら、あっという間にそのしこりはどんどん大きくなり、だんだん黒くなっていきました。

特別痛がる様子も、苦しがる様子もなかったのですが、ある日突然、きれいな青い羽根をバタバタとさせ苦しんだかと思ったらあっという間に逝ってしまいました。

それからというもの、時々空耳でふくちゃんの鳴き声が聞こえる気がして、その度に悲しくなり、ふくちゃんの足の感触、くちばしで口をつついてくる感じを懐かしく思っていました。

 

ふくちゃんが旅立ってから1か月以上が経った初秋。

新築された家へと引っ越し。

引っ越しと言ってもプレハブ住宅からは移動距離20mもありません。

学校から帰ってきた時には既に大方の引っ越し作業は終わっており、後は自分の少しの荷物を運ぶだけでした。

 

新しい家に住むことに興奮し、新しい木の匂い、新しい壁紙の匂いに一喜一憂し日々を過ごしていました。

 

新しい自分の部屋に慣れてきたある日、不思議なことは突然起こり始めます。 

CDラジカセで流行りの音楽を大音量で聞いていると、必ずと言っていいほど別の部屋からパチン・パチンという音が近づいてくるのです。

 

初めのうちはそれほど気にしていなかったのですが、そのうち音楽を聴いている時以外にもラップ音のようなものが2階のあちこちから定期的に聞こえてくるようになりました。

それはまるで音と一緒に何かが移動しているかのように。

 

そしてある日、とうとう私は見てしまったのです。

 

もう定番のように夜中の2時ころ、トイレがしたくなり目が覚めた私は「あー、こわいなあ。朝まで我慢しようかなあ。」と思いながらテレビをつけました。

 

なんとなーくテレビを見つめながら再び眠りについた私は夢の中で手鞠を見ます。

手鞠が誰かの手を離れワンバウンドし、ころころと転がる様子。

その手鞠は新しいのですが、異様に古めかしい気がするのです。

「うっわぁ気持ち悪い」という気持ちと同時に再び目が覚めたのが、起きて時間を確認してからさほど時間が経過していない2時過ぎでした。

「あー、やっぱりトイレ行きたいなあ。電気全部つけていこう。」と意を決してトイレに行きました。

トイレの入り口横には洗面所があり、その洗面所がとてつもなく恐ろしいのです。

何とも言えない異様な空気をまとった空間がトイレの前にあり、その洗面所をはさむようにトイレの向かいには4畳半のサービスルームがあります。

そこから発せられ洗面所に通じる異様な空気は、何を話さなくても兄弟全員が感じ取っていました。

 

無事にトイレを終え、部屋に戻り、最後自分の部屋の扉を閉めようとしたその時。

 

手鞠が転がってくるのが目に入りました。

 

思考が停止する私。

 

もちろん実際にはそんな手鞠は目の前にはありません。

 

「さっきのは見間違いだったんだ。あんな夢を見たせいだ。」

そう思うことにして再び布団に潜りこみました。

 

それでもあの映像が脳裏に焼き付いて離れません。

寝よう寝ようと思うほど、どんどんるつぼに嵌まり眠れなくなっていきます。

心の中で知っている限りのお経をあげ続け、知っている個所だけを繰り返し、そうこうしているうちにまたウトウトしてきていました。

 

しかし

再びあの鞠つきの音が聞こえてきたのです。

 

とん 、 とん 、 とん 、 とん 、 とん ・・・・・。

 

「あれ?私とうとう耳がおかしくなってきたかも」

 

そう思ったときでした。

 

赤い刺繍の入ったひざ丈ほどの着物を着た女の子、青い生地の着物を着た弟のような男の子が閉めたはずの扉の前に立っています。

 

正確には閉めたはずの扉が少し開いていて、その隙間からその二人が見えるのです。

そしてその女の子の手にはあの手鞠が・・・・。

 

しかし不思議と怖さはそれほど感じません。

「もしかしたら私の先祖霊なのかもしれない」。

そう感じ取った私は不思議とすべての怖さから解放され、気がつくと眠りに落ちていました。

 

その二人はその後も異様な空気を感じるたびに音や姿で度々私の前に現れました。

もしかしたら、あの洗面所・四畳半から出てくる異様な空気の正体から私たちを守ってくれていたのかもしれません。

 

社会人になり家を出た私は、それ以降実家に帰省するたびに自分の部屋で滞在することが多いのですが、昔のようにはっきりとその二人を感じることがなくなりました。

 

あの二人の姉弟は誰だったのか、確かめる術はありませんが、一つ言えることは「怖いものではなかった」ということです。

 

もしかしたら今でも私のことを見守ってくれているのかもしれません。